イギリス政府のGambling Commission(賭博管理委員会)が、注目すべき調査結果を発表しました。
The British Gambling Prevalence Survey 2007
前回の調査が1999年でした。その後、オンラインカジノやポーカーなどのオンライン賭博が人気を博し、依存症が増えたのではないかと一般的には考えられてきました。
ところが、結果はそうではなかったようです。調査結果の概要は次の通りです。
- 調査はバーミンガム大学のJim Orford教授とノッティンガムトレント大学Mark Griffiths教授の協力のもと、National Centre for Social Research(社会調査全国センター)が実施した。
- 人口の68%(3,200万人の成人)が過去1年に何らかのかたちのギャンブルをした。(1999年は72%)
- そのうち1,000万人は、国営宝くじ(National Lottery)のみに参加した。(1999年は1,100万人)
- 英国で人気のギャンブルは、国営宝くじ(The National Lottery Draw)で57%、スクラッチカードが20%、競馬が17%、スロットマシンが14%。
- インターネット上のギャンブルをしたのは6%(3%はポーカーやカジノ、4%はブックメーカーでの賭け)。他にFOBT(fixed odds betting terminals、ブックメーカーのショップに置いてあるゲーム機)で3%がギャンブルをした。
- ギャンブル依存症と判断されたのは、成人人口の0.6%または0.5%(判断指標による差)。前回調査と変わっていない。
- 依存症が多く見られたのは、スプレッドベッティング(依存症の人の14.7%)、FOBTの11.2%、ベッティングエクスチェンジの9.8%。
- その他の国・地域のギャンブル依存症率は、米国3.5%(2000年)、シンガポール4.1%(2004~5年)、マカオ4.3%(2003年)、香港5.3%(2005年)、カナダ0.5%(2003年)、ノルウェー0.2%(2003年)など。
ということで、オンラインギャンブルが一般化した2000年以降にそのせいでギャンブル依存症が増えたということはなさそうに見えます。
ただし、スプレッドベットやベッティングエクスチェンジなど、従来あまりなかった分野で高い依存症率が見られるので、このあたりは今後問題になってくるかもしれません。(日本でも投資という体裁をまとったFX=海外為替証拠金取引という賭博性の高い行為が広がっているので、調査をすれば同じような結果が出る気がします)
それと、前回1999年の調査のときは回答回収率が65%だったのに対し、今回は52%とだいぶ低いため、調査が実態を反映していないと疑う向きもあります。
依存症のひとがそれを認めてわざわざ回答するとは思えないという説も一理ありますし、英国でのギャンブル関係の売上げがこの10年で4倍以上になっているという事実も、調査結果と多少矛盾があるように見えます。
イギリスでは、今回の調査に対していろいろな反応があるようです。
Reaction: UK gambling report (BBC)
この調査結果が、イギリスのスーパーカジノ計画を推進するかどうか判断する一つの目安として使われることから、今後も結果についての議論は続きそうです。
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